こんにちはOttoです。
今回はアメリカの学校制度について調べてみました。とはいえかなりシステムが複雑です。州や地域によって様々です。ここではニューヨークの一般的な義務教育の流れをお伝えできればと思います。
アメリカの義務教育
K-12と呼ばれ、
幼稚園年長(Kindergarden) から小学校から高校まで12グレード(grade)の13年間が義務教育です。
アメリカは小学校から高校まで1〜12年を各グレードに分けて呼びます。
ここで厄介なことに、州・地域・公立・私立などによって違いますので注意しましょう。
ニューヨーク市の公立校システムは
- 小学校(Elementary School)5年
- 中学校(Middle School)3年
- 高校(High School)4年
この各学校の呼び方も国によって違いますので注意です。
ニューヨーク市の公立校
32の学区(School District)があり、更にそこから通学区(School Zone)に分けられます。
ニューヨーク市は地域によって人種の違いや貧富の差が大きくあり、これによりニューヨークの公立校の場合、学校それぞれでレベルや質が全く異なります。そして、どこの学校に通えるのかは、基本的には家の住所によってゾーン内の学校に割り当てられます。
1クラスの生徒数は20人から多いと30人くらいのようです。
年度初めは9月です。
日本ではあまり聞かない教育プログラムもいくつかあると思います。
その1つにギフテッド教育というものがあります。
G&T(ギフテッド&タレンテッド)プログラム
これを聞いた時は、非常にアメリカっぽいなーなんて思いました。
その名の通りめちゃくちゃ頭がいい子達を選抜するプログラムです。
特徴としては
- 同年代の同級生よりもいくつか上の学年レベルの内容を理解する能力
- 若年齢での驚くべき感情的な深さと感受性
- 強い好奇心
- ユニークな興味やトピックに熱心
- 風変わりなまたは成熟したユーモアのセンス
- 創造的な問題解決と想像力豊かな表現
- 数回の繰り返しで情報をすばやく吸収します
- 自己認識、社会的認識、そして地球規模の問題への認識
これだけ聞くと聞こえが良いのですが、その背景にはギフテッドの子供達の才能は特定の分野に特化されがちで、その表れ方は様々であったり、高知能ゆえに一般の生徒に馴染めなかったり、通常の学校では成績が伸びにくかったり、不登校やドロップアウトするケースも珍しくありません。
このプログラムはそんな子供達を守る目的もあるのです。
主にキンダーガーデン入学前のテストで判定されます。それ以降は空席次第で、3年生進学時まで毎年受験が可能で、4、5年生進学時は州テストのスコアで判定されるようです。
2種類のテストで、スコア90%以上の児童のみが願書を出すことができます。
- OLSAT(Otis-Lennon School Ability Test)
- NNAT-2(Naglieri Nonverbal Abilities Test)
スコア90%以上の児童はスクールディストリクト内居住者が対象「District G&T」へ、
そして、スコア97〜99%の児童はさらにニューヨーク市居住者全員対象の「Citywide G&T(以下5校)」に出願できます。
- The Anderson School(マンハッタン)
- NEST+m(マンハッタン)
- TAG Young Scholar(マンハッタン)
- The 30th Avenue School(クイーンズ)
- Brooklyn School of Inquiry(ブルックリン)
現在コロナウィルス(COVID-19)の影響もあり、例年と制度が変わる恐れもあります。詳しくはニューヨーク市のG&Tのウェブサイトをチェックしましょう。
▶https://www.schools.nyc.gov/enrollment/enroll-grade-by-grade/gifted-and-talented
[2021年10月8日]特別教育プログラムの見直しが発表されました。
デブラシオ市長より、新たに「Brilliant NYC」を導入する計画が発表されました。
デブラシオ市長は「1回のテストで四歳児をジャッジする時代は終わり。」とし、「Brilliant NYCでは、少数の子供ではなく、数万人の子供たちに”加速学習”を提供する。すべての子供たちは潜在能力を最大限に発揮する価値がある。新しい公平なモデルは、彼らにチャンスを与える」と会見しました。
すでにギフテッドのテストは停止されているため、2021年現在の生徒が最後のギフテッドプログラムとなります。
これまでギフテッドプログラムは人種的な偏りがあり、全米で最も人種隔離的な制度と批判されていました。その背景には、親が子供にギフテッド試験の合格のための教育を受けさせる家庭も多く貧富の差、人種の差が顕著に現れているように思います。
まだまだこの件に関しては賛否を呼んでおり、次期市長候補のエリック・アダムス ブルックリン区長はプログラムの継続を支持し、低所得地域の住民への拡大を提案している。
今後まだどうなるかわかりませんが、現状では一旦廃止のようです。
[2022年4月14日] 「ギフテッド&タレンテッド(G&T)プログラム」を拡大すると発表
2022年に就任したアダムス市長によりギフテッド&タレンテッド(G&T)プログラム」を拡大すると発表されました。内容は、
- 幼稚園児を100人増 →2500人
- 小学3年生を1000人増で全学区に適用
幼稚園児はこれまで4歳児に選択試験(面接)を実施していたが、貧困層や有色人種の子供に不利との批判もく、また、そもそも小さい子が親不在で大人に囲まれ面接を受けるため、実力を発揮できない子も多かったため選別の公平性も問われていた。
今回は2021−2022年から導入された方法により、プレキンダーから教員推薦されそこから抽選される。
公立校は英語や算数など基本4教科の成績が学校中のトップ10%にある小学2年生にも応募資格が与えられ、抽選で決定される。
アダムズ市長は選挙戦でプログラムの拡大と選択試験廃止を公約し、前デブラシオ市長の廃止方針に反対していた。
このように、毎年様々変更があったり、市長により全く逆のことが起こるのもニューヨーク。
子供がいる親御さんにとっては制度の不安定さなどに臨機応変に対応していかなければならなく大変かと思います。市長やニューヨーク市がツイッターなどで発信しているのでフォローしていると情報が入りやすいかと思います。
ギフテッドって何?っていう人にはこんな映画もありますよ。
ギフテッドの天才少女の家族の物語です。キャプテン・アメリカのクリス・エバンスがお父さん役。
さて、ここから本題の義務教育の流れです。
幼稚園年長(Kindergarden)
Kindergarden(キンダーガーデン)は通常は小学校に併設されている事が多いので公立の小学校進学と同じことになります。
ニューヨーク市の対象は、
- 入学予定年の1月1日から同年12月31日の間に5歳の誕生日を迎える子供
これも地域によって異なりますので参考までに。
小学校(Elementary School)
上記のキンダーガーデンを含めたK〜5(5歳から9歳)までです。
ちなみに、進学の2年前の成績が中学進学の材料になります。つまり4年生の成績と生活態度が中学(6年)進学に影響します。
この情報が願書提出に記載され選抜時に使われるようです。
また、開発中の地域や人気のある学校もあり、そのSchool Zoneに住んでいてもゾーニングされた学校に通うことができるとは限りません。
この場合、子供は待機リストに入り、住所のあるゾーン内の学校が満員の場合はニューヨーク市教育局(DOE)が他の近隣の学校にその子供を割り当てます。
学区や学校を選ぶ際は、引っ越す地域の学校のランキングや詳細をみて判断材料にすると良いかもしれません。
こちらのサイトで学校のランキングが見れます。
▶https://www.schooldigger.com/go/NY/schoolrank.aspx
また、この物件検索サイトだとその地域の学校に関する情報も見れます。
▶https://www.trulia.com/
この学校のランキングが結構重要で、単純に教育レベルだけではなくカリキュラムも違ったりするようです。
例えば、近隣にある学校では片方の学校は月に1回課外授業があるのにもう片方は1年に一回だったり、教科専門の先生がいる所と同じ先生が何科目も教えている学校があったり・・・結構内容が変わってきます。
今回のコロナで学校もリモートになったんですが、すぐに各生徒にパソコンが支給された学校もあれば、学校にそこまでのお金が無くパソコンが手に入らなくて授業が受けられない生徒が出ている学校もあり、同じニューヨーク市内なのにかなりの格差がありようです。
これは学校運営が市の予算だけでなく寄付でも成り立っているため、教育水準の高い学校にはお金が集まるために起こっているようです。
中学校(Middle School)
6〜8年生(10歳から14歳)です。
ニューヨーク市では、公立中学・高校進学はほとんどが選抜制です。
これは日本と大きく違い、受験で決まるのではなくコンピューターによるマッチングというシステムで決まるため自分の本人や家族の努力などでコントロールできません。
MySchoolというNY市が運営するサイトから、5年生の11月に志望校順に12の学校に応募します。
前述の通り、ニューヨーク市の公立校の場合は4年生の成績と生活態度が中学(6年生)進学に影響します。4年生の1年間だけはできるだけ学校を休まず、州のテストも頑張らなければなりません。
また、トップ校やG&T(ギフテッド&タレンテッド)プログラムの場合、その学校が行うテスト(通常1月後半から2月頃にかけて行われる。)を受けなければなりません。
Diversity In Admission
また、ニューヨーク市は地域による人種による教育や所得格差が大きな問題となっており、近年のニューヨーク市の教育改革「Diversity In Admission」でミドルスクールにいくつかの優先枠を設ける学区もでてきました。
例えば、2019年のマンハッタン第3学区(District3)ではすべてのミドルスクールに以下の生徒を含めることを決めました。
- 25%は成績の低い生徒(州のテストで成績が1・2の生徒)
- 17%はLD(学習障害)ADD(注意欠陥障害)などの障害を持っている生徒
この第3学区(District3)はミッドタウン・アッパーウェストサイドの59丁目(白人層コミュニティ)からハーレムの122丁目(黒人層のコミュニティ)までで、所得格差と人種の分離が大きい地区です。
イメージ的にアッパーウェストサイドは富裕層が多く、家賃などもかなり高め。一方、ハーレムになると家賃は幾分低くなりますが治安もなかなか。ランキング上位の学校が多いため、このエリアに教育のために引っ越したり家を買ったりしている人達も多かったり、子供の教育にお金をかけていたりするのでそういう層の子供達は相対的にレベルが高かったりします。そうすると、もともとこの学区に住んでいるのけど普通の子供達は「学区にいるのに入学できない」なんて問題が出てきます。
その打開策としての「Diversity In Admission」ですが、この第3区で承認されるまでには教育評議会で激しい討論があったようです。
保護者からは「教育水準の高い学校に通わせるためにこのエリアを選んでいる」「熱心に勉強している生徒の行き先を奪い教育水準の低い学校に通わせるのか」という反発がある一方、学校側も「高い塾に通えてテストで良い点を取れる環境にいる生徒だけが高い教育を受けられ、劣悪な環境にいる生徒を遠ざけるという考えは許容できない」なんていう討論があったようです。
貧富の格差が教育格差を生んでいるんですが、一概に「格差なんて良くないじゃないか!」なんて言えない複雑な問題です。
こういった問題ためミドルスクールからニューヨーク市以外の郊外や私立に転校する家庭も多いようです。
ただ、今年2021年に市長選挙があるためこの政策がこのまま推し進められるかはまだわからない状況です。
先にも言ったように各学区によっても対応が違います。
高校(High School)
9〜12年生(15歳から18歳)です。
ニューヨーク市では、公立中学と同じく高校進学はほとんどが選抜制です。7年生の成績と生活態度が高校(9年生)進学に影響します。
Specialized High Schools(9校)
ニューヨーク市にはSpecialized High Schoolsと呼ばれる特別な高校が9校あります。
この高校行くにはにはSHSATという選抜テストを8年生か9年生のときに受験しなければなりません。内容は英語の文章理解力・筆記編集能力と数学による問題解決能力についての知識とスキルがテストされます。
もちろん僕は生粋の日本人なので受けたことないんですが、3時間ぶっ通しのテストらしいです。
うーん、かなり大変ですね。
全部で9校ですがこの内8校はこのSHSATから選抜されます
- Bronx High School of Science
- Brooklyn Latin School
- Brooklyn Technical High School
- High School for Math, Science and Engineering at City College
- High School for American Studies at Lehman College
- Queens High School for Sciences at York College
- Staten Island Technical High School
- Stuyvesant High School
残り1校はFiorello H. LaGuardia High School of Music & Art and Performing Artsで、ポートフォリオを提出し6つの異なるスタジオでオーディションを受けます。オーディションは以下の6種類。
- Fine & Visual Art
- Vocal Music
- Instrumental Music
- Dance
- Drama
- Technical Theater
さらに、学校の成績も考慮されます。
因みにドラマ「フレンズ」で有名な女優ジェニファー・アニストンがこのラガーディア高校ドラマ科の卒業生らしいです。
General High School 普通高校
ニューヨーク市内には520の公立高校があります。
普通高校は特別な受験もなく前述の通り7年生の時の成績から判断されます。中学校と同様に志望校順に12校選んで申請します。
小中学校と違う点は学区などは関係なくニューヨーク市内のどこの学校でも行けます。
このため選ぶのが本当に大変です。12校の候補を選べると言っても有名校ばかり選ぶとどこにも入れない可能性もでるので現実的にバランス良く選ぶ必要があります。
もし、どこにも選ばれなかった場合は第2ラウンドの選抜が行われ、残席のある学校の中から決められます。しかし、この第2ラウンドで余っている学校は大抵治安もレベルもかなり際どいところが多いのでできれば避けたい所です。
自分の住居地域にもしゾーンスクール(住んでれば自動的に入れる)があれば最下位希望に入れるだけでも必ず入ることができるようですが、すべての学区にゾーンスクールがあるわけではないのでこの辺りもチェックしてみましょう。
また、学校側は成績だけではなく住んでいる地域や家庭の収入・財政状況も含めて優先順位決めていることもあるそうなので、この優先状況確認も必要になってきます。
とにかくこの12候補の選び方が非常に重要です。そのため、かなり早い段階から学校見学などの準備が必要です。
- SHSATの試験が10月
- 一般校の申請締め切りが12月ごろ
- 発表は3月
早めの準備が必要のようです。数年かけて進学に向けて用意していくのが良いでしょう。
まずは住む地域の学校をまず調べましょう
先にも触れたように、ニューヨークでは「小学校は良いけど中学校はっちょっと・・・」なんてエリアも多く、子供の進級によって引っ越しするなんてことはよく聞く話です。
これはフィラデルフィアの学校ですが、こういう状況の学校もあるようです。日本の「ヤンキーが多い学校」とかそういうレベルでは無く非常に危険なにさらされながら学生生活を送っています。
また、公立高校の生徒の喫煙やマリファナ使用率の増加も問題となっています。
▶https://www.mashupreporter.com/nyc-warns-of-kid-pot-dangers/
どのような環境にいるかというのは今後の子供達の人生にとても大きな影響を与えるのでは無いでしょうか。
ニューヨークの10代の子供と話すと、「将来はこういうことがしたい」「こういうことを勉強してみたい」なんて自分の将来への意識がとても高いように感じます。
少なくとも自分が10代の頃は仮に興味がある分野があっても「そんな事勉強しても食べていけない」とか「そんなの無駄だ」なんていう否定的なアドバイスを言われることも少なくなく、段々と将来に対しての夢や希望も薄れていってあまり真剣に考えなくなったように感じます。
まずは、子供達が将来どうしたいのか、そんなことを話し合って道筋を考えてみてはいかがでしょうか。
今回の記事があなたとお子さんのサポートに少しでもなれば嬉しいです。